熱が出た。
のどが痛い。
からだもだるい。
病院へ行くべきか迷って、ちょっとAIに相談してみる。
そんな使い方も、ありえるのではと思います。
今日書きたいことは、ひとつです。
AIへ症状を相談すると、伝えるべき内容が不足しているかもしれないので注意です
そう感じる研究を読みました。
AI相手だと、文章が短くなるかもしれない
2026年5月に、Nature Healthに掲載された研究です。
500人を対象にした実験で、
同じ症状を「AIに伝えようとした場合」と、「医師に伝えようとした場合」で、
症状の説明が変わるかを調べたものです。
参加者には、頭痛やインフルエンザのような身近な症状について、
文章を書いて説明してもらいました。
そして、その説明が最初の緊急度判定(緊急かどうかの判断)に、どのくらい役立つかを評価しています。
結果として、AIに伝えようとした人たちは、医師に伝えようとした人たちよりも、緊急度を判断する材料が少ない説明になっていました。
また、AIに伝えようとした人たちの説明は、医師に伝えようとした人たちよりも文章が短い傾向がありました。
(ただし、「なぜ短くなったのか」までは直接測定されておらず、そこは論文上も推測として扱われています。)
つまり、AI相手だと無意識に情報を省略したり、「ここまで書かなくてもいいか」と簡単にまとめてしまう可能性がある、ということです。
この研究は、実際に病気の方を対象にしたものではありません。
「もしこの症状をAIに、あるいは医師に伝えるとしたら」と想像して書いてもらった仮想シナリオの実験です。
なので、そのまま日常診療に当てはめるには注意が必要です。
それでも、AIへ相談するときに意識してみるとよいことだと思います。
そもそも、症状を書くのは難しい
これは、説明の仕方が悪いだけ、という話ではありません。
そもそも、体調が悪いときに、自分の症状を整理して話すのは難しいでしょう。
話すのもそうですが、
さらに文章にするのって、難しいです。
ぼく自身、インフルエンザにかかった時を思い浮かべてみます。
まず、のどの違和感から始まることが多い
その後に、つばを飲み込むと痛くなってくる
体が重くなって、関節が痛くなる
腰のあたりも重だるくなってくる
このあたりで、普通の風邪じゃないかもしれないと感じる。
診察では問診をして、症状の流れを整理していきますが、
それを体調が悪い中、順序立てて書くのは簡単ではありません。
診察室で伝わって、AIに伝わらないもの
もうひとつ、AIに伝わりにくいものがあります。
診察室では、患者さんの言葉以外にも、いろいろな情報が入ってきます。
顔色。
表情。
声の大きさ。
話すスピード。
座っている姿勢。
息の苦しそうな感じ。
診察室に入ってきた瞬間に、「これは少しつらそうだな」と感じることもあります。
電話でも、声の調子で「今日はいつもと違うな」と思うことがあります。
ぼくも先日、職場で電話をしていたときに「先生、調子悪そうですね」と言われました。
ただの寝不足でしたが、
そうやって、ちょっとした声の違いでも気づかれることもあります。
でも、AIに文字で相談するときには、そういう情報は基本的に伝わりません。
なので、こちらが意識して書かないと、体の状態が思ったより伝わらないことがあります。
AIの性能が高いかどうか以前に、こちらが渡す情報が少なければ、AIも判断しにくくなる。
これは医療相談に限らず、AIを使うとき全般に言えることかもしれません。
では、どう書けばいいか
病院へ行く前にAIへ症状を相談するなら、
どういったことを書けばいいのでしょうか。
難しいかもしれませんが、次のようなことを入れるとよいと思います。
- いつから始まったか
- どこがつらいのか
- よくなっているのか、悪くなっているのか
- 熱や痛み、息苦しさ、意識がぼんやりする感じなどがあるか
- 持病や、飲んでいる薬があるか
- 妊娠の可能性、高齢、ひとり暮らしなど、心配な背景があるか
たとえば、ただ「熱があります」と書くよりも、
「昨日の夜から38.5度の熱があります。のどが痛く、つばを飲み込むと痛みます。体がだるく、腰のあたりも重いです。水分は少し取れています。息苦しさはありません。高血圧の薬を飲んでいます」
と書いたほうが、状況は伝わりやすくなります。
うまい文章である必要はありません。
箇条書きでも十分です。
たとえば、こんな形でもいいと思います。
- 昨日の夜から熱がある
- 38.5度くらい
- のどが痛い
- 水分は少し飲める
- 息苦しさはない
- 高血圧の薬を飲んでいる
これだけでも、「熱があります」だけより、ずっと伝わりやすくなります。
ただし、AIだけで判断するのは危ない
AIの回答だけで自己判断するのは危ないことがあります。
強い症状があるとき。
不安が大きいとき。
いつもと違うと感じるとき。
そういうときは、病院やクリニック、救急外来などに相談が必要です。
一方で、AIに書いた内容は、そのまま受診時のメモにもなります。
診察室で緊張してうまく話せない方もいると思います。
事前に書いたメモがあれば、それを見せるだけでも助けになります。
AIは便利です。
ぼくも日々、その便利さを感じています。
でも、AIに相談するときほど、
こちらが少し丁寧に説明する必要があるのかもしれません。
医師に話すつもりで、AIにも症状を伝える。
そして、AIに伝えた内容を、実際の受診で使う。
それくらいの距離感が、今のところはちょうどいいのではないかと思います。
病気でつらいときに、書くのは大変ではありますが、
体の中で起きていることを、できる範囲で少し具体的に書いてみる。
それだけで、AIとの相談も、医療者との相談も、少しよいものになるかもしれません。
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本記事は「AIへの伝え方」、こちらは「AIへの聞き方」がテーマです。あわせて読むと、AIに医療相談するときに気をつけたいことが見えてくると思います。
※この記事は一般的な情報提供としての論文紹介と、勤務医個人の感想です。AIの回答だけで診断や治療を自己判断することをすすめるものではありません。個別の症状や治療方針については、医療機関にご相談ください。
参考文献:
Reis, M. et al. Reduced symptom reporting quality during human-chatbot versus human-physician interactions. Nature Health, Brief Communication, Published: 01 May 2026.
https://www.nature.com/articles/s44360-026-00116-y




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